2020年01月12日

逆転人生

NHKドキュメンタリー『逆転人生』がおもしろいです。

たまたま私が見たのは「町工場が大躍進 転倒減らす介護シューズ」の回でした。

OEM(他社ブランドの製品を製造すること)の仕事がメインの町工場が
自社ブランドを立ち上げて、成功するまでのお話でした。


もともとは、綿手袋の縫製工場として稼働していた会社でしたが、その後はスリッパやバレーシューズなどをつくる会社として発展していきました。

しかし、時代も変化し受注は減る一方。OEMに頼るだけではいけないのではないか。
会社の未来を考えたとき、ふと頭をよぎったのが自社ブランドの立ち上げ。
そんなとき、高齢者施設園長から「お年寄りが転ばない靴」の開発依頼が入ります。

室内履きをつくるノウハウはある。
何とかして新しい道を切り開けないか?

転倒・転落で亡くなる高齢者は、交通事故で亡くなる人の3倍以上。
転倒が原因で骨折すれば、長く動けなくなったり、そのまま要介護状態になる人も多い。
どうにかして転びにくい靴を作れないか?

これは、まだ誰も作っていない。
つまり競合がない。


この発想に可能性を感じた社長は、介護シューズの開発に乗り出します。

施設に赴き、観察すると、ほとんどの入居者はスリッパか室内履きを履いていました。
そして歩き方や、歩く際、生活の中でどんなふうに困るのか話を聴き、足元を観察して、介護シューズを試作します。
しかし、試し履きしてもらった結果、安心安全とは言えず、当初の考えは甘かったことを思い知らされます。

靴の底をすべりにくくして
どんな状態の足にもフィットするように、ジッパーを使ったり、マジックテープで作ってみたりして履いてもらうのですが、すべりどめが利き、かえって床に引っかかって転びそうになるのです。

高齢者は筋力が落ちて足を上げることができずにちょっとした段差でもつまづきやすくなります。
ただすべりにくくするだけでは転倒防止にはならなかったのです。

単にこれまで作ってきた室内履きの延長で作るわけにはいかないと試行錯誤が繰り返されます。
「高齢者にとって安全な靴をつくりたい」という思いに共鳴してくれた靴職人の方も一緒に作ってくれましたが、なかなか思うような靴をつくれません。


社長がこれらの問題に向き合っているとき
問題は静かにふくらんでいました。
会社では業績が落ちはじめていましたが、開発に没頭していた社長はこれまでの仕事内容までフォローできません。
自分達のことなど何にも考えてくれない、話しても無駄だ、と社員の士気も下がって行きました。

開発はなかなかうまくいかず、社員の不満や子供の不満も噴き出して
八方塞がりの苦しい中。

行き詰まった社長はふたたび施設を訪れ、高齢者の足元を観察します。
そしてついに大きな転機のキッカケをつかみます。

「つま先だ!」と。

筋力がある若い人は、歩くときにかかとから床につける歩き方をしますが、
筋力のない高齢者は、足を十分にあげることができず、つま先から着地して歩きます。


そこに目をつけた社長は、靴底が上に反り上がっている靴を作ります。
施設での試し履きの評価も「歩きやすい」と上々です。
ついに転びにくい靴が完成しました。

早速、電話やDMで売り込みを始めます。

ところが、予想に反して売上は伸びず、赤字に転落、退職する社員の数も増えました。

やっとシューズが完成し、ひとつクリアしたと思ったらまた次の問題が浮上します。

介護シューズはただ完成品を渡せばいいというものではなく
高齢者によっては
浮腫んで左右の足の大きさが違っていたり
左右の足の長さが違っていたり・・・

ひとりひとりの身体に合わせてつくる必要がありました。
しかし、個人に合わせてひとつひとつをつくるのは、時間もコストもかかります。


そんなとき、一本の電話が入りました。
買って間もないのに靴底が剥がれたという知らせでした。

介護シューズはすべて回収、
気が遠くなるほどの数のシューズの検品し直しです。

遅くまで検品作業をしていると
これまで否定的だった社員たちが
ひとり、またひとりと手伝ってくれるようになりました。

社長は、朝礼で介護シューズを使ってくれているお客様からの
「転ばなくなった」「歩きやすい」といった感謝の気持ちが綴られた手紙を読んでいました。

自分たちの仕事が、誰かの役に立ち、喜ばれている・・・

その事実が少しずつ社員の意識を変えていったのです。


社長の意識も多くの高齢者に向き合ううち
売上重視から、いかに歩きやすい靴をつくり、ひとりひとりの悩みに応えられるのか、喜んでいただけるのか、に変わっていきました。

この話を見ていて
ここまで努力をし開発を続けて個人の悩みにも寄り添った商品が売れないはずはないと思いました。

次の展開に目が離せません。


そして気になる次の展開は
「使ってもらえば商品の良さがわかるはず」との思いから、施設に5足ずつ送り、気に入ったら半額で購入してもらい(気に入らなかったら返品)というやり方に変えたのだそうです。

よほど自信がなければできないことですし
売上重視していたらできないことです。


この方法の反応は・・・

次々に購入の申し込みが殺到し2年後には介護シューズが売上の4割を占めるまでになりました。

その後も、お客様から足に関するトラブル、履ける靴が見つからない等の、さまざまな相談を受けるようになっていきます。

そのひとつひとつの話に応えていきます。
それを叶えるアイディアは、社員の中から生まれました。
ひとりひとりの足に合わせてシューズを作れるように、様々なサイズや形のパーツを多種作成しておき、組み合わせを変えることにより、オーダーメイドできるようにしたのです。

OEMに依存していた町工場は、いつしか自社ブランドの靴を販売するようになり、たくさんの高齢者たちに喜ばれるようになり、売上を伸ばしていきました。

社員たちも、お年寄りの方々の期待に応えること、アイディアを出し合って物を創り出すこと、感謝されることなどの「喜び」を原動力に仕事ができるようになっていきました。

この細やかな配慮のシューズづくりは、町工場だからできたことなのかもしれません。
そして大逆転できたのは、採算や利益を度外視して高齢者のために歩きやすい靴を開発したこと、そして、高齢者のさまざまな悩みの解決に向き合い、取り組んできたからこそだと社長はおっしゃっていました。
大手メーカーが介護シューズに参入した後も、この町工場は介護シューズでトップであり続けているのです。


諦めなかった根性と忍耐力に感動です。
口で言うのは簡単ですが
自分の生活と社員の生活もかかっている中で

どれだけ多くの苦難と向き合われたことでしょう。


そして、尽きない悩みに応え続けるエネルギー。

それをひとりの高齢者の笑顔が支えているのでしょう。



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posted by Kaoru at 20:51| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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